- 始めに
- スペースゴジラはどのようにして生まれたか
- ホワイトホール
- ブラックホール内外の過酷な環境に耐えられるか
- タイムパラドックスの問題
- しかしまだ謎も残る。
- 恐るべき脅威
- 白神博士の苦難と希望
- トンチキ設定かハードSFか
前回の記事はこちら!
science-fantasy.hatenablog.com
始めに
『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編のタイトルが『Godzilla X Kong: Supernova(原題)』に決定した。
宇宙を連想させるスーパーノヴァ…これはあるいは…という声も国内外のファンから出ている(宇宙超怪獣キングギドラはモンスターバースにおいては宇宙から来訪する怪獣というより地表と地底をウロウロする怪獣として描かれているような印象だが、であれば宇宙怪獣として登場する必然性に満ちた怪獣として【スペース】ゴジラをおいては他にいないだろう)*1
他にオルガ(「ゴジラ2000 ミレニアム」に登場)やガイガンも候補らしい
(スペゴジ専用ブログなので一つのクリーチャーにまとめてしまったが…)
さて、いよいよスペースゴジラの生態に迫ろうと思う。エネルギーや能力、耐久力を推察するにはまずスペースゴジラ誕生の環境を推察する必要がある。
スペースゴジラはどのようにして生まれたか
G研究所生物工学教授の権藤千夏らの推論によると、宇宙へ飛散したビオランテの粒子か、宇宙へ飛び立ったモスラの脚に付着していたゴジラの肉片かは定かではないが、いずれかに含まれていたゴジラ細胞がブラックホールに飲み込まれて結晶生命体を取り込み、恒星の爆発で発生した超エネルギーを浴びて、ホワイトホールから放出される過程で、急速に異常進化して誕生した宇宙怪獣…がスペースゴジラだとの事だ。
ゴジラxコングの次回作のタイトルがスーパーノヴァであるため、国内外のスペゴジファンが色めきたってるのも上記の生育過程が関係している。
しかし、生物がブラックホールに吸い込まれて耐えられるものだろうか。現実の物理学に基づけば、ブラックホール(BH)の事象の地平線を超えて戻ってくることは不可能だ。しかし、SF的な設定を導入することで、**「ゴジラ細胞が耐えて、別宇宙・並行世界に放出される」**という展開は十分考えられるという。
ホワイトホール
特にホワイトホールに関しては最近でも新展開が見られた。2025年3月、シェフィールド大学とマドリード・コンプルテンセ大学の研究者たちは、ブラックホールの特異点が量子的な「ゆらぎ」の領域に置き換わり、そこからホワイトホールが形成されるという理論を発表した。この理論では、ブラックホールの中心で空間と時間が終わるのではなく、新たな段階へと移行する可能性が示されている。
この研究では、平面ブラックホールと呼ばれる簡略化されたモデルを使用し、量子力学の法則を適用することで、特異点が量子的な「バウンス」(跳ね返り)を経てホワイトホールへと変化する可能性を示した。これにより、ブラックホールは物質やエネルギー、時間を吸収するだけでなく、放出する存在として再定義されるかもしれない。
何のことやらだが、スペースゴジラとは相性がいいかもしれない。ブラックホールに吸い込まれた情報が、ホワイトホールを通じて“別宇宙=並行世界”に放出される、という筋書きは十分に理論上許容されうるそうだ。ホワイトホールがこうした別宇宙への「通路」になっているとするのは、多元宇宙仮説と非常に親和性が高い。*2
この視点を採り入れると、スペースゴジラの出自は:ブラックホールを経て別宇宙=並行世界に飛ばされたゴジラ細胞が、そこで異なる物理法則や存在の根本構造に適応し、“異なる宇宙のゴジラ”として再構成された→その存在がホワイトホールを通じて我々の宇宙に“輸入”された」と再定義できる。つまりスペースゴジラは「他宇宙産のゴジラ」、あるいは「マルチバースからの侵略者」とも解釈できる…。案外次回の映画でここら辺の話が取り入れられるかもしれない。ホワイトホールの新説なども出て理論的裏付けも行いやすく幸先がいい状況だ。
どうやって特異点に到達するまでにスパゲッティ化を避けられるのかは問題だが…
ブラックホール内外の過酷な環境に耐えられるか
しかしブラックホールに接近したG細胞にとってはそう楽観できる状況でもない。ブラックホールに近づくとスパゲッティ化とも呼ばれる強烈な潮汐力に見舞われる。まずG細胞は10¹²〜10¹⁴ N/kg程度と推察される事象の地平線付近の潮汐力に耐える必要がある。
物体がこれに耐えるのは不可能であるため、この時点で超越者としての何らかの力が必要だ。次いで事象の地平線での時空の歪みが挙げられる。ここでは時間の流れが外部から見て停止し、時空の歪み(曲率)は**プランクスケール付近(10³⁵m⁻²)**に迫る。どういう事かというと、普通の物質やエネルギーでは存在が破壊されるため、**G細胞は自己修復を超えた「因果律耐性」**を持っている必要が生ずるレベルである。
これを耐えたらその先には、ブラックホール中心部(特異点)が待ち構えている。密度が無限大、圧力も無限大になるとされる理論上の空間である。これに耐えるには、例えば時空そのものの構成要素を再構築・制御可能な存在(例:11次元超弦的構造)である必要があるかもしれない。
ホワイトホールを通じて仮に並行世界へ移動したとすればエネルギー的には**プランクエネルギー(10¹⁹ GeV ≈ 1.96×10⁹ J/粒子)**以上の情報保持が必要かもしれない。別世界への入門を確実なものとするためには、スペースゴジラはG細胞を通じて構成情報を全時空に同時に分布・再生可能という、準神的性質が必要とされるかもしれない。
うーむ…大変な艱難辛苦だ…しかし、これで劇中の描写を説明する事が容易になるかもしれない。まずはスペースゴジラの耐久力である。登場早々にMOGERAとの亜光速での正面衝突事故に遭ったと考えられるが、何事も無かったかのように感じられた。これはブラックホール内での鍛えられ方を見れば当然の結果かもしれない(上記のように因果律の制御が可能ならなおの事である)
表の①については体重2万トンの昭和ゴジラが54年のビキニ環礁核実験規模の直撃を受けた際を想定。
が、そもそも昭和や平成ゴジラを含めてゴジラ本体に核が直撃する事例は少ない。
細胞の規模感(1ナノグラム)でBHの潮汐力に耐えうるというのはもはや卵子や精子の時点で地上最強みたいな話である
次に、世界線の相違についてである。スペースゴジラは外見上明らかにビオランテの影響が感じられる(ゴジラにより撃破された際も光に還るなどビオランテ戦時と似たような現象が起きた)が、スペースゴジラが現れた世界にビオランテは存在しない。
タイムパラドックスの問題
どういう事かというと平成ゴジラ世界は(初代→ゴジラ84→ビオゴジで抗核バクテリアにより活動を休止しその後23世紀で復活…)の世界線と、(未来人の干渉によりビオゴジまでのゴジラ消滅→キンゴジ〜)の2つの世界に分岐している。
スペースゴジラが世界に存在しているという事は一方の世界が消滅してもう一方が存続…という事ではなく併存しているという可能性が高い(未来人のタイムマシンは時空だけではなく並行世界間での移動も可能なのだろう)しかしスペースゴジラが出現するとすれば本来はキンゴジ以降の世界線ではなくビオゴジ以降の世界線なのだ。この世界線のゴジラは大幅にパワーダウンしており、なおかつ抗核バクテリアにより活動を休止している。
23世紀からの接触がこの世界線には無いためMOGERAのようなオーパーツも建造出来ず、敵無しの状態となったスペースゴジラは23世紀のゴジラ復活を待たずして人類を滅亡させているだろう(モスラとバトラ、ラドンは存在するだろうがいかんともし難い気がする。ベビーゴジラはひょっとしてラドンと共に過ごしてリトルに成長してるかもしれない…)
ホワイトホールから放出され、時空移動だけでなく並行世界移動を遂げたとすれば辻褄があう。ゴジラが20世紀末に存在しない世界線から存在する世界線に(スペゴジの意志がどれぐらい介在したかはともかく)移動したのだ。
しかしまだ謎も残る。
ゴジラVSスペースゴジラに登場する人物キャラクターは、ゴジラVSビオランテ戦でゴジラにより殉職したとされる権藤吾郎の妹である権藤千夏や親友である結城晃などが登場する。結城は親友をゴジラに殺された恨みから復讐に燃えておりそれが物語の展開に大きく関わっていく。しかし、この世界線は23世紀人が介入したギドラ戦以降の世界である。その副産物としてのメカゴジラやMOGERAなんかも建造されている。
一方でいわゆるビオゴジは23世紀人により84ゴジラや初代もろとも消され最初から存在しなかった事になっている。であれば存在しないビオゴジにより権藤兄が殺されたのは矛盾が生じる。そもそもG細胞をめぐる争いで殺された白神英理加や父の白神源壱郎はゴジラがおらずG細胞を入手する事が不可能なため存命していても不思議ではない。
敵討ちの動機もなくなろう
ここにスペースゴジラの能力の一端が考えられるかもしれない。上記で論じたようにG細胞がブラックホールの圧力に耐えるには因果律を制御するほどの力が必要だ。ゴジラや薔薇、そして英理加の細胞が生きようと願った結果得られた能力なのかもしれない。そしてビオランテの影響が大きいのであればスペースゴジラは、ゴジラ細胞に加えG細胞(ビオランテ由来)や人類のテクノロジーの影響も受けている存在と言えるだろう。
ビオランテは「植物×人間×ゴジラ」という異質な融合体で、遺伝子情報を通じて人間の意識や想念と接続する能力があると示唆されていた。G細胞がスペースゴジラへと成り代わる際、その因果的背景や記憶情報(過去の戦い)を一部再構築してしまった可能性も考えられる。つまり、「ビオランテが存在した世界線の情報」自体が現在の世界に流れ込んでしまったのではないだろうか。
これは、スペースゴジラが「物理的攻撃」だけでなく、世界そのものの履歴(過去・未来)に干渉する存在であることを意味するのかもしれない。もはや時空の病原体とすら言える。
恐るべき脅威
そう言えば平成ゴジラシリーズにおいて本家であるゴジラVSモスラに登場していたコスモスも危機を伝えにやって来た。基本的にコスモスは初登場以降平成ゴジラシリーズでは他怪獣に対して介入しない(ラドン、バーニングゴジラ、デストロイアそれぞれ人類にとっては大きな脅威だったはずだが)スペースゴジラに対してだけは例外だった*3
彼女たちが警告するのは、スペースゴジラの地球を破壊しかねない物理的強さもさる事ながら**「世界の因果そのものを書き換えかねない脅威」**に対してではないか…
そもそもコスモスやその意を受けた権藤教授はスペースゴジラが地球を破壊する事ではなく支配する事が目的だと主張していた。
この支配は、以下のような形で現れるのかもしれない
バーニングゴジラやデストロイアのような地球環境改変クラスの怪獣出現にも泰然としているものぐさコスモスがその危険に慌てて再び人類の前に協力するべく自ら姿を現したのだとすれば、「スペースゴジラは単なる強敵ではなく、宇宙規模で“歴史そのものを食い荒らすバグ”のような存在」という位置づけが妥当かもしれない。であるがゆえに人類側も亜光速で接近してる物体にも関わらず迅速な捕捉に繋がったのかもしれない(コスモスにとってそれ以外の怪獣は小物すぎて探知できない、あるいは探知した結果やはり小物すぎると判断して自分たちが対処する必要なしと割り切ったのかもしれない)
「ビオランテ戦時のゴジラの記憶」が皆に共有されているのは偶然ではなく、世界そのものが書き換わりつつある兆候だと解釈できる。そして、それはスペースゴジラの存在がこの宇宙の時空的整合性を壊しつつある証拠である。これは極めてコズミックホラー的な展開であり、「VSシリーズ」が最終章に向かっていく中でふさわしいスケールの伏線とも言えるかもしれない。
あるいはこれは、ビオランテを作り出した白神博士の思惑が関係しているのかもしれない。
白神博士の苦難と希望
白神博士は表面上「娘を失った悲しみによる狂気により禁忌をおかすマッドサイエンティスト」として描かれていたが、実は彼は並行世界・因果律の再構築による英理加の“救済”を狙っていた可能性も考えうる。G細胞が強靭だっただけ…というのは空想科学的にブラックホールやホワイトホールに耐えた事を考えればいささか荒唐無稽となるだろう。人為的なものと組み合わさって介在していた方が説得力はある。
英理加の遺伝情報をG細胞・バラに組み込むという行為は、単なる再生ではなく、「多次元的な“痕跡”を残す」作業だったのだ。ビオランテが持つ特殊な形質(植物の再生能力、G細胞の進化能力、人間の知性)は、時空間情報を蓄積し、干渉するためのプラットフォームだった可能性がある。
つまり、ビオランテ=英理加を“全世界線に保存し、全世界線に輸出する”存在。ゴジラVSビオランテでは案外あっさりビオランテはやられて(リアル寄り作品であったこともあり)その巨体や造型はともかく能力面では地味なビオランテ、焼かれるキメラ怪獣を見て博士は何を思ったのかと考えていたが、ゴジラにやられるまでが折り込み済みだったとしたら…あるいは本来はゴジラVSメガギラスに登場するような人工ブラックホール発生器を用立てる計画だったのかもしれないが…。
博士の本当の目的が「英理加が死ななかった世界の探求」だったとすれば、彼の行動はSF的には極めて一貫性がある。ビオランテの存在が地球にとどまらず宇宙全体、あるいは並行世界へ**“侵蝕”を始める装置**であり、それがスペースゴジラの誕生(あるいは干渉)を招いたとも考えられる。そう考えると、スペースゴジラの出現は偶然ではなく、「ビオランテが宇宙に向けて発した記憶の波紋」に対する宇宙的応答とも読める。
まぁ結果としては白神博士の世界を改変するのではなく、逆に白神親子が犠牲にならなかったはずの世界線においても過去を改変し悲劇の再生産に至ったのかもしれない…と考えると皮肉な事だ。
筆者の妄そ…いや、感想+考察まとめです
上記の設定が活かせればモンスターバースに平成スペースゴジラがそのまま殴り込めるかもしれない(モンスターバースにおいてはG細胞が宇宙に放出されていないため、スペゴジが出現するとしてもどう解釈されるのかと議論されているが、並行世界をうつろう存在であればありのままオリジナルのスペゴジが自由に各世界に進出可能だ)
全てはここから始まった
トンチキ設定かハードSFか
しかし、ゴジラVSスペースゴジラはゴジラ84とゴジラVSビオランテのリアル路線から昭和怪獣を復活させてのお祭り騒ぎへと一変させたギドラ戦以降のノリでの、その中でも特筆すべきお祭りはっちゃけ回であると見られがちだが、実はゴジラVSビオランテに次ぐバリバリのハードSFものであり、それゆえ登場するスペースゴジラもビオランテの形質を色濃く受け継ぐ怪獣として描かれ、時間の関係とお子様を考慮して科学設定についてはサラッと触れるに留め詳細は明らかにされなかったのかもしれない…そこで(怪獣の造型はカッコいいものの)時系列などにおいて矛盾点が目立つ作品としてあげつらわれるようになってしまった…と。
空想科学SFとトンチキ回は発達した科学と魔法のように見分けがつかないものだ。
しかし筆者が気になるのはマイゴジの典子ごとくの英理加女史である。研究職の中で爆殺された後本人が宇宙最大の研究対象となった今何を思うのであろうか。因果律をも支配して最高の知性を証明するのだろうか(コスモスは抽象的だと感じてかスペゴジの目的は地球支配と発言していたが実際にはこの世界全体の支配ということが言いたかったのだろうか)
何を思う…てスペースゴジラの行動をみれば普通に人類にブチ切れて…るんでしょうねぇ(汗)
ヒトの身でありながらゴジラ種と一体化し不死性を獲得した彼女はゴジラバースのラスボスかもしれない
そしていい話風で終わりそうになりつつ結局エネルギーの謎については次回へと後回しになった…が上記生成仮定の推察によりスペースゴジラの活用エネルギーにも目星はつきそうだ。