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science-fantasy.hatenablog.com
妖星ゴラスVS平成+23世紀連合
前回はスペースゴジラとの決戦を前提にどんどんインフレしていくMOGERAのエネルギー量を前に、おののくばかりである。これからもまだまだ増える可能性もあるが、27.6EWとはつまり27.6×10の18乗Wである。全世界で核実験などで使用された核爆弾が累計7000メガトンぐらいであり、これは29EJとなる。また、世界の年間消費エネルギーが昨年度で620EJである。MOGERAが30秒近く宇宙で稼働するだけで年間エネルギーが必要となる。
これでもスペースゴジラの決戦には役不足であろうが…何せ相手は光速だ。
ところで、スペースゴジラの能力をはかる前に東宝世界の他の宇宙船についても見ていきたい。これは未来技術に支援されたMOGERAの能力がどの水準にあるかをはかる意味合いもある。決して筆者が最近妖星ゴラスの再上映を劇場で見たため行き当たりばったりで思いついたというわけではない(聞かれもしないのに言っていくスタイル)
物語は土星探査の任務を負った日本の宇宙船JX-1・隼号が、富士山麓宇宙港から打ち上げられたところから始まる。この隼号、数兆円もの巨費を投じて建設された宇宙船との事だ(しかも放映当時1962年当時の価値で考えれば…)MOGERAもそれぐらいかかっているはずで、どちらも原資は税金であろう。どちらの組織が予算を吸い上げる事が出来たかをまず競う事ができるかも知れない…タックスタワー…
ゴジラ氏:ん?なんだあのチカチカしてるのは…
妖星ゴラスと宇宙船の位置関係を探る
それはともかく、ストーリーをかいつまんで言うと土星探索途中に妖星ゴラス発見の報があり、船長の判断で妖星ゴラス観測任務に変更、その後妖星ゴラスの重力圏を見誤り巻き込まれてしまう…地球へ巨星直撃コースの危機を報せながら…という話なのだが*1色々と謎はある。まず、肝心の隼号の出発日時だが諸説ある(1976年説と79年説)MOGERAの速度と比較するには統一する必要がある。ぶっちゃけ相対的に1976年9月29日出発1979年12月24日ゴラスと衝突により遭難…の方がリアル宇宙開発においては現実的な速度であるのだが(まぁ現実の1970年代にはどの道到底不可能だろうが…まず妖星ゴラス来ないし*2)これだとその後継機の鳳号(おおとり号)が妖星ゴラスの近傍宙域までサッと行ってサッと帰って来たことと矛盾する気がする(性能面でダンチであった可能性はあるものの)
それに映画のスピード感や登場人物が大して肌年齢?などが変わってない事などから、隼出発から妖星ゴラス観測までに数年の歳月を費やしているとは思えない。うむ‼︎という事で筆者は1979年9月29日出発説を取る。
隼号は当初地球を出発してから10月15日に土星の探査を予定していたが、未確認の天体が観測された事からそちらを優先する事になる。うーむ…本来の予定を独断で切り上げて国費数兆円の宇宙船をホイホイ動かすとは…この時点では当天体が人類を脅かす存在だと判明していない段階において…まさに英雄と何とかは紙一重なのか。ここから隼号は70日ほどかけて妖星ゴラスと邂逅するわけだが、肝心の妖星ゴラスとの位置関係が重要だ。
船長は土星周辺で航行していた隼号がいま最も妖星ゴラスと近い位置にいると言っていたが、具体的な位置について詳細は不明だ。劇中の描写で分かっている事と言えば妖星ゴラスが冥王星から地球まで5日ほどで到達する速度だと言う事だ。ここから算出すると妖星ゴラスは光速の3%前後で接近しつつあるようだ。ここから逆算すると1979年終わりの段階では大体地球から概ね6610億kmほど離れているのではないか。
劇中では「1979年12月25日(火)の報道ジャーナル」と銘打って太陽系外1267億km地点にて遭難…というような記事が見られたそうだ。文章には「太陽系外」1267億kmとあり、この太陽系外というのがミソになりそうだ。狭い意味では惑星が存在する数十億kmの範囲だが、広い意味ではオールトの雲の勢力圏(最大2光年)までである。太陽の重力により複雑な軌道を取る可能性はあるものの、妖星ゴラスは自身が地球の質量の6千倍でありかつ速度が光速の3%である。よほど近接(例えば太陽から数百万kmの至近)しない限り太陽の重力が影響を与えるとは思えない。ほぼ直線で来るだろう。記事の太陽系外1267億kmというのは、この時代では太陽系探索が史実よりも進み冥王星以遠に多数の大型惑星が発見されている可能性もある。あるいは史実と違いより小型の天体も惑星と認められているのかもしれない。現代でもこれまで惑星格であった冥王星が準惑星に格下げられるなど適当さというか哀愁を感じる部分もある。
そもそもこの世界の記事やイラストではやたらと誤植が目立ち(先ほどの1976年〜や1892年の太陽系〜など)何が正解かは不明だが、とりあえず妖星ゴラスが光速の3%〜で移動していたのは不変の要素だ。隼号は70日かけて長駆6610億kmを疾走したと仮定しよう。すると導き出される速度は光速の36.5%、これに必要なエネルギーは宇宙艦が1万トン程度だとすると、少なくとも5.97×10の22乗ジュール(約597垓ジュール)となる。実際には土星宙域からホイホイ身軽にやって来る事や、おそらく遭難するとは思っておらず地球に帰る気マンマンであった事を考えれば更に加速する事も可能だったのかもしれない。
ゴリ押し‼︎反物質燃料
しかしこれは以前考察した同じく東宝キャラクターであるX星人の円盤に匹敵、もしくは凌駕する可能性も出てくる。ちなみに反物質を用いた場合質量1万トンの宇宙船を上記の条件で進ませる場合には300トン台の反物質があれば良いようだ。あくまで理論上の効率の場合であり(現実には推進剤との兼ね合いや反物質保持装置の重量、またエネルギー利用効率により変動する)このプランより低速なMOGERAの場合より遥かにリソース上リーズナブルな雰囲気だが(もちろん隼号は妖星ゴラスまで片道切符ではなくゴラスに到達するまでに減速して観測、任務終了後に地球へ帰還する予定であったはずであるため実際には数百トンより遥かに大量の反物質燃料を必要とするだろうが)質量が軽い事と加速時間が取れる事、推進剤を想定してないからであろうか。まぁMOGERAほどではないにしろ強力な加速Gに見舞われるはずだが…それに隼号は原子力を使用していたとする資料もあるが、はて…反物質を併用してはならないという法はないのだ。
観測任務のため子機を切り離すの図
鳳号は恐らく更に性能は上だ。そして妖星ゴラスが地球の6千倍質量という事が隼号の通報により明らかになった後も一応破壊オプションは健在だった。せっかく隼号が命を賭して破壊は事実上不可能な質量の天体であることを知らしてくれたのに…案の定鳳号でゴラスに接近した結果、破壊不可能な事が判明したがその理由がゴラスの質量が増えている(6000倍→6200倍)事だというのだ。このことから質量6千倍程度であれば破壊しうるような技術力を人類は有していたのだろうか⁇それこそが反物質爆弾なのかもしれない。
そもそも隼号も鳳号も原子力(核分裂、核融合)で短時間で光速の数十%まで加速するのは現実的ではなく、反物質を使っている可能性がある。これら宇宙船は日本の所有であり、この時代(というか世界線)の日本は反物質を燃料や触媒として大量生産するような技術力を獲得していた可能性がある。それを背景に、一見荒唐無稽な地球移動作戦を展開していたのかもしれない(例えば反物質を触媒にして強力な核融合反応に繋げるなど)劇中では核融合エネルギーは各国で依然機密扱いであり、そこからすると核融合反応の方が反物質の効率的な製造貯蔵などと比較して容易な気がするので違和感はあるが、例えばバッテリー主体の「コードギアス」や「ガンダムSEED」の世界のマシーン兵器の方が核融合炉を実用化した世界である「宇宙世紀(ガンダム)の兵器」より強力に見えたりする事がある。現代の基準では容易な核融合が中々難しく、困難な反物質の利用が意外にも余裕に扱えてもそういう事はあり得るだろう(過去に遡れば細かい爆発の制御を必要とするエンジン車よりバッテリー車の方が現実的と考えられていた時代もあった)現代においても核融合は依然商用化されてない事を考えるとどう転ぶかは分からない。
さて、そういうわけで「妖星ゴラス」の世界では反物質を使ってゴラスを破壊出来る可能性や希望が僅かながらあったのかもしれない。地球移動作戦に気を取られて忘れていたが、遥かに地球移動より難易度の高い破壊作戦についても一応人類は検討していたのだ。果たしてどのぐらいのエネルギーなのだろうか。
妖星ゴラスの予測されていた質量は地球の6千倍、大きさは地球の約4分の3である。ブラックホールには及ばないが、ちっこくて重いのだ。つまり密度が高く、硬いという事が言えるだろう。破壊には骨が折れそうだ。
なぜ破壊を選択肢に入れていたのか…
完全な破壊について考えると、ゴラスの重力束縛を越えるエネルギーというのは4.3×10の37乗ジュールである。粉々に破壊した上重力で再結合しないように破片を遠くにフッ飛ばすのだ。いつぞやの流転の地球で必要な総エネルギーが10の35乗ジュール台であった事を考えるとすさまじい。何せ妖星ゴラス破壊のエネルギーの方が100倍ほど巨大なのに加えて流転の地球数千年の旅路のエネルギーを瞬時に放出する必要がある。これは反物質爆弾になおすと20京トン台の規模となる。太陽出力で生産できる反物質が理論上毎秒430万トン、年間で135兆トンであるため、不可能と言って差し支えないだろう。いや、流転の地球で検討したみたく太陽の重力井戸からなんらかの方法で直接水素やヘリウムを調達し核融合発電からの反物質を取り出せば…(悪ノリ)
妖星に突っ込む反物質爆弾ミサイルのイメージ図
しかし、こんな明らかに困難な数値だと興醒めというか、そもそも破壊をも視野に入れて危険をおかして偵察に赴いた鳳号の面々がバカみたいだ(うち1人は無意味に記憶喪失になってしまった)出来ない事が分かる事には意味があるが、初めから僅かの希望も無い場合は考えたり行動するまでもない(そもそもこの時点では既に地球移動作戦が展開されており、存亡の危機に人類の力を無意味に分散させるという、重大な過失にあたるのではないか)
あるいは破壊ではなく、僅かに軌道をずらすなどのより現実的な方向を模索していたのかもしれない。
その場合の必要エネルギーは1.79×10の28乗ジュールであり、依然として巨大なエネルギーではあるものの反物質に換算するとほぼ1億トン…おお‼︎わりと現実味を増してきたぞ⁇
先に述べたように太陽の全エネルギーを100%効率で使えるなら毎年100兆トン近くの反物質が手に入るのだ。妖星ゴラスの時代はまだそこまでの段階には到達していないのだろう。1億トンならギリギリ手に入るが妖星ゴラスの質量を考えるとそれでも厳しい…となっていたところにゴラスの質量が実は数%増えていた事が分かり、諦めがついたというところであろうか。しかし、劇中ではこの後北極海に核エンジンを設置しなければならないと苦悩していたが、ここまでのエネルギーを扱えるのであれば少し余裕に見えたのもむべなるかな…。
ダイソン球で思いついたが(そう‼︎また余計な事を…)地球を太陽からのレーザーで押す事で移動させられないだろうか。計算の結果どうやら太陽の全エネルギーをレーザーに変換し地球で100%反射する事で1.37年(約16カ月)で40万km移動させる事が可能だ。まぁ色々懸念はあるがとりあえず隼号による地球直撃コースの通報時点でレーザーを送信出来る状態で無ければならない。多目的ダイソン球で多目的超大型レーザーを運用していなければ詰むという事だ(まぁ地表で急いだからといって短時間で巨大核融合ロケットエンジンが完成するのも不思議だが…)
南極の巨獣マグマ
レーザーついでで思い出したが、この映画には実は怪獣も登場する。製作者にもファンにもなぜ真面目なSF映画の画面に脈絡もなく登場したのかと呆れられている忌み子ではあるが、当時の映像技術の水準から考えて見ればVTOLからレーザーが掃射され崖崩れが起き…となかなか迫力があった。物語においてもこいつのせいで地球の移動日程が遅れるなど影響が大きい(しかしコイツやゴロザウルスなどの存在を念頭に置くと「メカゴジラの逆襲」でチタノザウルスを発見した真船博士がなぜ学会から追放されたのかあらためて謎だ…自在にコントロール出来ると主張してしまったため当局に危険視されたのか)
ちなみに、怪獣マグマは身長50m、体重2万5000トンの巨体だ(ゴジラと同じサイズ感で体重はより重い)これをVTOL機は2度目の攻撃でほぼ瞬殺した(最初の攻撃ではダメージはあったようだが生きていた)
この怪獣の水分量は体重の70%であると仮定し、水を百度に熱し、蒸発させるエネルギーを考えてみる。レーザーにより巨獣を一瞬で確実に絶命させるには45.1TW出力があれば可能、10秒かけてじっくりミディアムに処理するには4.51TWだ。他に心臓や脳など弱点に致死的な打撃を与える場合、数GWから数百GW程度で可能との見積りもある。ただ劇中では精密な照射を行ってるようには見えなかった(なんかレーザー爆撃の余波で崖崩れとか起きてた)
後の世の(と言っても妖星ゴラス内の時間軸の2年後だが)ゴジラ84のスーパーXが1門あたり最大1.25GW程度な事を考えると驚くべき事だ。最大で数万倍の出力差である。そりゃゴジラ84でカドミウム弾以外の装備がレーザー砲含め全く役にたたないはずである。
ゴジラ:炊飯器ごときでこのオレを倒そうなどと…
ん?月と赤い星が直撃コース⁇これはもうダメかも分からんね
大気圏内用とは言えあのサイズでTW級のレーザー砲撃をバンバンやると言うことは(エネルギー規模で言えば原子力でも可能ではあるものの)先の考察の通り反物質が東宝日本において普及している事の表れではないだろうか?さすが後にウルトラマンに登場するビートルの原型なだけある。
いずれにしても、日本が元気な頃のお話でした…で締めようと思ったがこれはMOGERA解説であった事を失念していた…ヤレヤレ…結論から言えば早い段階で(おそらく違う世界線だが西暦で言えばモゲラより12年前に)光速の35%以上で推進可能な宇宙船が存在した可能性が高く、大量の反物質もしくはそれに類する強力な迎撃手段の構想があったと思われる…
次回はここから得られた知見を背景に更にMOGERAの能力を突き止めていきたい(て、究極生物/破壊神のスペースゴジラとの比較はどうなったんじゃい‼︎)