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兵器としてのメカゴジラについて
いよいよメカゴジラである。キングギドラ、モスラに次いで人気怪獣のメカゴジラだが、昭和時代の敵宇宙人が建造したロボット怪獣ではなく「Gフォース」という平成ゴジラシリーズのうち『ゴジラVSメカゴジラ』以降の作品に登場する架空の軍事組織が運用する機体として登場する。
1992年、度重なるゴジラの脅威に対抗するため日本が中心となって国連G対策センターが設立され、その中の実働部隊として設立された。「ゴジラ大百科」では組織としての規模は小さいため、メカゴジラやMOGERAといった超兵器の一極集中とし、通常兵器は旧型戦車を改造した無人戦車などを運用していると解釈している…
エ‼︎じゃあVSメカゴジラ以降のやられ通常兵器メカは無人兵器となっていたのか…驚きだ。
ある種のドローン(AI?)兵器がこんなに早期に実用化されていたとは…まぁゴジラ相手にたびたび特攻まがいの作戦を遂行する旧軍のごとき自衛隊に嫌気が差したのか。92式メーサータンクほか各種メーサー車輌/航空機も保有しているようで、近接攻撃しか出来ない彼らも無人兵器としてなら申し分あるまい。国連総会ではAI兵器(LAWS)を制限すべしとの決議が採択されているが、AI兵器の国家による所有を禁止した上で世界最高峰の頭脳を集めてAI兵器を独占的に開発、それにより現状では各国民国家の国軍に依存している国連がその状況から脱するための国連常備軍を形成するというのも面白そうだ。まぁ常任理事国が反対するだろうが…
余談はここまでとして、メカゴジラである。メカゴジラは23世紀の技術が使用されているメカキングギドラの死骸を解析してそこから得られた知見により建造された。設定上身長120mで重さ15万tであり、多種多様な攻撃を行う。装甲は超耐熱合金NT-1と呼ばれるものであり、ゴジラの通常の熱線(〜50万度と推察)は最後まで通さなかった。交戦のたびにゴジラにかなりのダメージを与えて、終盤ではガルーダ(対G超兵器試作1号機)と合体して再起不能の損傷を与えた。
メガバスターの威力
まずは攻撃力を考察していきたい。メカゴジラには様々な攻撃法があるが、その中でも口から発射する「メガバスター」や目から発射される「レーザーキャノン/ビームキャノン」はレーザー兵器である。メカキングギドラが口から発射するレーザー砲を参考にしたらしい。
レーザー砲と言えばスーパーXが使用していた120万kw出力のレーザー砲を思い出す。前回のゴジラ84の考察においては2門のレーザー砲で上空から射程圏内のあらゆる目標を短時間で破壊できる可能性を感じさせる装備だと論じた。元々の平和を愛する自衛隊のレーザー砲の威力ですらこうなのだから23世紀からの強化された技術ならさぞや圧倒的な破壊力であろう…‼︎
しかしどの資料にもメカゴジラのレーザー出力について記述はない。それどころかメカゴジラ本体の出力についても資料がない。判明しているのは動力にレーザー核融合炉を使用し、その燃料は衛星軌道上で製造したヘリウム3だという事だけである。ただ、メカゴジラの発揮できる出力については推察は出来る。このメカゴジラは重さ15万tのボディにも関わらず音速で巡航飛行が出来るのだ(おそらく熱核ジェットのようなもの)音速の巡航飛行が出来る時点でそこらの戦闘機よりすごい(F-22など数種の戦闘機を除き音速以下である)まったく揚力などを想定していない形状にも関わらずである。また、空中にホバリングしながらビーム攻撃を展開する事もでき、こうした攻撃にゴジラは翻弄されていた。これもその質量15万tを考えるとすごい事である。
ここからビーム出力もある程度は想像出来ないだろうか。飛翔能力をとりあえずの最高出力として最大で似たようなビーム出力が得られると仮定すれば(スーパーXの場合はビーム出力が合計で推進力の20倍近くであったが…)
例によって計算してみた結果ホバリング時に必要な推力は73.5GW(7350万kw)、音速巡航飛行時に常時発揮されている推力は8.82TW(8820GW)という結果が出た。推力がこれだけ必要という事であって、エネルギー源となる熱核融合炉の出力はより巨大なものとなる。熱核ジェットと想定して効率50%(かなり高い)と想定すると熱出力はそれぞれホバリングに147GW、音速飛行時には17.6TWとなる。音速飛行時の出力が桁違いに大きいのでホバリング時に様々なビーム兵器で余力を持ってゴジラを攻撃というのは現実味が増してくる。
ホバリング時の147万GWというのは例えば1時間持続すれば529TJであり(1時間持続する必要はあまりないであろうが)BEV1470万台分のバッテリー出力に相当する。音速巡航に関しては1時間の飛行で63.4PJとなり、世界最大の核実験に供されたツァーリボンバの放出したエネルギーの30%規模となる。もちろんこれは熱核融合炉の熱出力に過ぎないため、これを電気に変換してレーザー光線にするためには更に炉の出力が巨大である必要がある。
つまり概ね秒あたりとりあえず17.6TW出せるとする。最大でこの全てのエネルギーをビームに割り振れるとする…つまり17.6TWのレーザーを集中的に照射すれば、大気の一部を直接加熱する事で局所的に気圧や温度を変化させ、人工的に気象現象を作り出せるという。神の所業か…また、数百メートルサイズの小惑星程度であれば宇宙空間で長時間照射する事で破壊や軌道変更が可能だという(ここは航宙能力のあるMOGERAさんにやってもらますか)
うーむ。破格のエネルギーだ。他にこのエネルギー密度を用いて、レーザー核融合の引き金にすることも可能だとの事。核燃料を一気に加熱し、瞬時に核融合反応を引き起こすための実験にも利用できる…これは以前スーパーX2について論じた際*1の100万 TW誘引ビーム発生についての話(VSビオランテ戦の考察①にてゴジラの放射熱線とゴジラ周辺の海水を用いて局所的に核融合爆発を誘引するというもの)そもそもメカゴジラの核融合炉も「レーザー核融合」であるとの事で、メカゴジラのレーザー出力がそのレベルの規模であっても当たり前と言えば当たり前だが…。
ゴジラの熱線の出力とは?
というか設定上はメカゴジラのレーザー光線砲メガ・バスターはゴジラの熱線に匹敵というものがあった。前回のゴジラVSビオランテの考察で1秒あたり10 TWぐらいではないかと論じた事があった。実はゴジラの熱線はVSキングギドラ戦で格段にパワーアップした事になっている(身長は100m、体重は6万tと結構増量している)一説にはデフォで50万度の熱線も吐けるのでは?という。とりあえず50 TWになったと仮定しよう。メカゴジラの一秒あたりの音速巡航エネルギーは17.6TWでありゴジラの50 TWには及ばない。うーむさすがゴジラ…。
ただメカゴジラは未来の技術があるため謎の力でエネルギーを増幅出来るのかもしれない。そもそも自衛隊のスーパーXでも推進やホバリングのエネルギーより桁違いにレーザー出力が高かった。燃料消費がヤバいので普段はエネルギー消費を抑えつつゴジラとの決戦時は核融合炉としての能力を如何なく発揮しているのかも知れない(核融合炉で作り出されるエネルギーを反物質か何かで体内のどこかに蓄積してるのかもしれない…)結局核融合炉の出力はよく分からなかったが…。
うーむ…あの派手なビーム戦の陰ではそんな激しいエネルギー消費(おそらく税金の消費も)が繰り広げられていたとは…とは言えビーム戦のキラキラした光源がないとお子様たちの支持は得にくいのだ…
ちなみにゴジラの熱線についてであるが、10 TWについては VSビオランテ戦で瞬時に護衛艦を蒸発させた事から弾き出したと記憶しているが、単純に温度が5倍になったからと言って威力エネルギーが50 TWであるというのは早計かも知れない。温度が直接エネルギー密度に比例する場合には、確かに50万度と10万度のエネルギーの5倍と計算されるのだが、もし物質が黒体放射(温度からの光や熱放射)によってエネルギーを放出していると仮定する場合、放射エネルギー密度は温度の4乗に比例するという(シュテファン=ボルツマンの法則)この条件では、50万度の物質は10万度の物質の625倍のエネルギー密度を持つことになる。
ゴジラの熱線にどちらの計算を当てはめるべきかだが、ゴジラの熱線のような高温のエネルギー放射を考える場合、放射されるエネルギーは電磁波(光や熱線)としての放射エネルギー密度が重要になると考えられる。このため、**黒体放射エネルギー密度の比較(温度の4乗に比例する計算)**がより適切だそうだ。
ゴジラの熱線は、物質の温度が上昇することで放射されるエネルギーが増し、破壊力を発揮するものと見なされうる。温度が上昇するほど放射エネルギーが急激に増加するため、温度の4乗に比例するエネルギー計算が熱線の破壊力を推定するのに適しているのではないか。
したがって、50万度の熱線は10万度の熱線の625倍のエネルギー密度を持つと考えられ、より現実的な破壊力の推定が可能となる…確かに後にゴジラは強化されたスーパーメカゴジラに対してウラニウムハイパー熱線をぶちまけた。温度は一説には100万度に達するという。50万度のスパイラル熱線の2倍程度の威力では劇的な勝利というものが想像しにくいが(スパイラル熱線はほぼ通じず)上記のように温度の4乗に比例するエネルギー密度の関係を用いれば、ウラニウムハイパー熱線はスパイラル熱線の16倍のエネルギーとなるという。*2
恐るべき平成シリーズインフレ
また余談が長くなったが、ようするに10万度=10 TW換算であるならば50万度=6250 TWに達するのではないかという事である。ゴジラさんさすがにインフレが過ぎるのではないだろうか。確かにスパイラル熱線は初登場時でキングギドラの羽根に風穴をぶち開けたり首を飛ばしたりの大活躍ではあったが、スパイラル熱線→後にメカゴジラやスペースゴジラ(バーンスパイラル熱線)に使用する赤色の熱線よりもビオゴジ熱線→キンゴジの通常熱線の方がインフレ率のエグいパワーアップを遂げていたとは…
滅茶苦茶効率の良い核融合
上記を踏まえればスパイラル熱線の威力とは水爆1.5メガトンの爆発に匹敵する。また、地球に毎秒入射する太陽光の4%に相当し米国の年間消費エネルギー量のおおよそ0.1%にあたる…メカゴジラはこれに余裕で耐えた上で更にこれと同等の光線を発射するわけだ。どうりでゴジラがたじろぐはずである。ちなみにメガ・バスター使用時にメカゴジラが消費する核融合燃料は(1gで石油8トン分のエネルギーを賄えるというが)毎秒20kg前後が必要になると考えられる。ちなみに毎時音速飛行エネルギーにおいてもその十倍前後の200kg程度で済む。24時間運転しても4.8トンの消費に過ぎない。メカゴジラは熱核ジェットでのオート飛行により安心して全世界にゴジラ討伐のため(あるいは対人…⁉︎)展開できる事だろう。
ゴジラが強力な熱線を吐く事にはなんとなく納得していたが、人類側がこれを作り出すには理不尽なほど巨大なエネルギーを扱っている事が明るみになった。スーパーX2はゴジラの熱線を利用してダメージを蓄積させつつ核爆発を起こしていたが*3メカゴジラはデフォで核爆発並みのレーザー光線を照射出来るのだ。
また、メカゴジラは腹部エネルギー砲である「プラズマグレネイド」を装備している。ゴジラから受けた熱線を数倍にして返すというものだ。この攻撃を受けたゴジラはかなりのダメージを受けているように見えた。似たような原理でスーパーX2の1万倍やり返しビーム(エネルギー規模としてはビオランテ戦のゴジラ熱線が遥かに低エネルギーであったとはいえ10TW×10秒×10000という事で1000PW級と推察)があったが、あれはあくまでエネルギー拡散兵器である核爆発を頼りにしているのに対して*4メカゴジラは何度も熱線で自らのボディを攻撃してくるゴジラのエネルギーをそのまま熱線として狭い範囲に収束出来るのだ。攻撃で高まった熱の放出も兼ねているのかもしれない*5そもそもメカゴジラは消費できるエネルギーだけで考えれば本体だけでも更に強力なビームを放てると考えられる。
実はメカゴジラよりヤバかった⁉︎スーパーX
いかにもトンデモSFである…こんな出力現実的ではない…とはいえスーパーXなどと比較して有利な面があるかも知れない。サイズや質量が巨大で稼働時の必要エネルギーが大きくなる分核融合炉や燃料、武装のペイロードにも余裕は出てくる。スーパーXはあのサイズと機体重量(150tであり、メカゴジラの1000分の1)の中に原子炉や武装(大して使わないだろうから燃料は度外視して良いか)を詰め込まなくてはならない。ガンダムで例えればMSは放熱効率や推進剤、あるいは機体重量が軽すぎる事などで良くツッコまれるが巨大なMAや宇宙戦艦ではほとんどそうした議論を聞かないようなものである。しかも未来人の超技術などオーバーテクノロジーの恩恵は受けられていない段階の装備である。自衛隊脅威のメカニズムとしか言いようがない。
それに実際現在の技術では困難ではあるものの、こうしたメガトン核兵器級のレーザーについては(兵器ではないが)想定されていないわけではない。阪大は2021年にそれまでの超高強度レーザーの世界記録である10ペタワット(10の16乗ワット)を10倍以上超える超高出力レーザー光の生成を可能にする新技術を開発したと発表した。もちろん瞬間的な話ではあるし、照射が持続可能だとしてエネルギー源はどこから引っ張ってくるのかという話でもあるが、この規模の持続的なレーザー照射の用途についてはテラフォーミングなど構想されている。
火星の鉱物には大量の酸素や二酸化炭素が結合しており、地球に似た環境を作るにはこれらを高温で溶かす必要がある。最も簡単な方法として、アメリカの約11倍の大きさの鏡の列を宇宙に形成することで、火星を溶かすのに十分な太陽光を集めて太陽光励起レーザーにより照射する方法が紹介されている。これにより20PWのレーザーが実際に火星の表面に照射されると、表面の8メートルを溶かし、1立方メートルあたり約750kgの酸素と約50kgの二酸化炭素が発生する。ここから火星のテラフォーミングの基盤を作ろうというものだ。
いまはPW級のレーザーというのは専ら1兆分の1秒という短時間しか照射出来ないが、太陽光励起レーザーで太陽光を集めればその規模によっては実現可能なのだ。ちなみにNTTなどの民間企業を含め宇宙太陽光発電事業などで太陽光励起レーザーを重視している。JAXAもマイクロ波による無線送電と並行してレーザー送電も検討しているが、これも太陽光励起レーザーの利用を前提としたものである。
ゴジラ並みの出力のレーザー砲とはおとぎ話や未来SF技術ありきかと思いきや案外そうした時代に近づいているのかもしれない。
※1 そう言えば余談だがメカゴジラの装甲には人工ダイヤモンドミラーコーティングが含まれており、これはゴジラを苦しませたスーパーX2のファイヤーミラー技術の応用と考えられる。つくづくスーパーX2と縁のある装備である(まぁスーパーX2=レーザー核融合攻撃説云々は辻褄が合うと主張する筆者の妄想…いや推察だが…)
※2 つまり、6250×16でちょうど10万 TWである。100PWともいう。毎秒あたりで人類史上最大の核爆発ツァーリボンバの半分のエネルギー出力である(劇中ではそれなりの時間使用していた)
※3 あくまで筆者の感想です。熱線のうち「光の」エネルギーのみ吸収して発射しているという説もあり(その場合当然核爆発は関連せず)
※4 重ねて言いますが筆者のも…いや感想です
※5 むしろオーバーヒートの主要因になってるのでは?との説もある
*1:そう言えば余談だがメカゴジラの装甲には人工ダイヤモンドミラーコーティングが含まれており、これはゴジラを苦しませたスーパーX2のファイヤーミラー技術の応用と考えられる。つくづくスーパーX2と縁のある装備である(まぁスーパーX2=レーザー核融合攻撃説云々は辻褄が合うと主張する筆者の妄想…いや推察だが…)
*2:つまり、6250×16でちょうど10万 TWである。100PWともいう。毎秒あたりで人類史上最大の核爆発ツァーリボンバの半分のエネルギー出力である(劇中ではそれなりの時間使
*3:3 あくまで筆者の感想です。熱線のうち「光の」エネルギーのみ吸収して発射しているという説もあり(その場合当然核爆発は関連せず)
*4:重ねて言いますが筆者のも…いや感想です
*5:むしろオーバーヒートの主要因になってるのでは?との説もある